元上司 元気だった

95歳の元上司Iさんを訪ねた。2年前私が癌手術して以来無沙汰していた。私は寛解・定検中だがIさんは高齢でその間 万が一の杞憂もあり電話すら正直できなかった。不義理これではいけないと思い立った。
「Iさんはいつも寝てばかりです」(87歳の奥さんは『Iさん』と呼ぶ)とのこと。この日も昼の睡眠中だったが、起こされたIさんは私の顔を見るなりいつもの人懐っこい顔で手を差し出してくれた。私の癌治療の話に「今の医療技術(の高さ)すごいね」とか、昔の仲間(同僚)が少なくなった、ことなどを話された。
帰り際、奥さんが「Iさんはすっかり昔のことを忘れてしまったんですよ」と言われたのに私が驚いた。先ほど約20~30分話した内容はすべて現実的で、違和感が全くなかったのだから。奥さんは「食欲もないので心配です」と続けた。
私は再度、寝室のIさんのところへ行き(失礼ながら)頭をなでながら「奥さんと一緒に食事して、話をしてください」とお願いした。Iさんはまた笑顔で「分かった、分かった」と現役時のあのままの調子で応えられた。20歳近く年下の私が逆に励まされた。
